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幸せへのステップ5

これまでの話

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突然の失明から、およそ2ヶ月が過ぎました。それまでの間、パースでナンバーワンといわれる、視神経炎に詳しい医師とも連絡を取り、面会したりしました。
実は、視神経炎は難病として知られる多発性硬化症(MS)の初発症状の場合が多く、その関連性から、全身MRI検査によって病巣を探し出し、早期発見へと繋げる重要性があります。私の旦那は目の異常を訴えたのちに、このMRIを受けたわけですが、その結果を待たずして失明に至りました。

12月。
失明して以来、再びMRIを受けるため、2ヶ月前に駆け込んだ病院と同じ病院を訪れることになりました。結局、前回撮ったMRIの結果に異常が見られなかったことがわかり、やはり典型的ではない旦那のケースに、医師たちは病巣があるにちがいないと疑っていたようでした。

まずは診察してもらうため、ふたりで待合室に座っていたところ、ある一人の医師が声をかけてきました。
見上げると、病院へ駆け込んだあの日に旦那が診てもらうはずだった主任の医師でした。私はこの男の顔をはっきりと覚えていました。あの日、診察時間の終わるギリギリに駆け込んだ私たちを、別の診察室で帰り支度しながら、他の医師に旦那の診察をするよう頼んだのです。私がドアの向こうに見たのは、無責任な男の姿。あの日、帰らないで診てくれてたら。。。!すぐにMRIを撮って治療に踏み込んでくれてたら。。。!
しかもあろうことか、代わりに担当した医師に、”4日後にコルチコステロイド投与の治療を始めるから、今日は4日分の痛み止めを持って帰るよう伝えるように”との指示まで出して帰りました。

男は「失明したそうですね。そう聞いて気の毒に思っています。」と言いました。旦那の顔を見て、素通りなどできるはずがありません。
その日撮ったMRIにもやはり病巣は発見されず、多発性硬化症との関連性を見つけるに至りませんでした。

その後、パースで最も名高い視神経炎のエキスパートと言われる医師にも会いましたが、原因は不明のまま。しかし医師は「パースで1000人以上の視神経炎患者を見てきたが、失明に至ったのはあなたが初めてだ」と言いました。ゆえに、旦那の視神経炎は「多発性硬化症との関連はほぼ無い」と医師は断言し、その点は安心するようにと言いました。

家に帰ってから、私たちはそのことを彼の両親に報告しました。ところが旦那は「安心するためにあの医師に会いに行ったのではない。どうしてこんなことになったのか原因が知りたくて行った。誰もかれもが口を揃えて原因不明というのはもうたくさんだ!難病と関連してる方がまだ原因があってよかったのに!たった40才で、これからの残りの人生を片目だけで生きていかなければいけないなんて!!」。そう大声をあげて怒ったかと思うと、泣き崩れました。
今後の人生への不安と、この2ヶ月間のやるせない思いが一気に込み上げ、母親の胸で大声をあげて泣く彼。。。
私はこれまでずっと私の前では見せなかった、私が想像する以上の絶望を旦那が抱いていたことを、自分よりも何倍も大きくなった息子を抱きしめながら「わかっている。わかっているよ。」となだめていた義母の背中越しに悟りました。
家族が一丸となって、幸せに向けて歩もうと決断した日。

義父は、この年のクリスマスを、今までで一番最高のクリスマスにしようと言ってくれました。何日か後に来るクリスマスを心待ちに、こんなにも皆が強く幸せを求めたことはありませんでした。

クリスマス当日。
テーブルには義母が用意してくれた華やかなランチだけでなく、まだ彼や妹が幼かった時に、当時住んでた香港で、義母が買い揃えた思い出の品々も一緒に並んでいました。
幸せはまた必ず訪れる。この家族となら、絶対に幸せになれる。

幸せへのステップ6・完結




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